RNA新大陸 2009 6 7

 生産工場で何が重要でしょうか。
設計図でしょうか。
作業員でしょうか。
それとも工場長でしょうか。
 設計図がなかったら、いくら部品だけあっても、作業員は何もできないでしょう。
作業員がいなかったら、設計図と部品は、ただのガラクタかもしれません。
工場長が病気で長期休暇を取ったら、どうなるか。
長期的には影響が出てくるが、短期的には影響がないかもしれません。
 このように考えれば、わかりやすいのですが、
これが、タンパク質生産工場の話になると、途端にわかりにくくなります。
 最近まで、生命科学の分野では、DNAに注目が集まっていました。
しかし、今後は、RNAに注目が集まってくるかもしれません。
 こういう分野では、セントラルドグマという概念があり、
これは、「DNA→RNA→タンパク質」という概念のことです。
 ある本から、興味深いところを引用しましょう。
「研究者の目も、始まりであるDNAと、終わりのタンパク質に向けられ、
その間のRNAに注目が集まることは、あまりなかったのです。
 しかし、どうやらDNAを隅から隅まで調べ上げ、
ひとつひとつのタンパク質の機能を解明すれば、
生命現象のすべてがわかるというような、
ある意味単純なことではないと、
研究が進むにつれてわかってきました。
 RNAというフレキシブルな物質なしでは説明しきれないことが、
たくさんあり、見方を変えると、
DNAは単に情報を保存している物質にすぎず、
タンパク質は命令によって現場で働く兵隊であって、
それらをコントロールしているのがRNAである、
ということができるほどの存在であることが明らかになってきたのです」
 書名 教科書ではわからない遺伝子のおもしろい話
 著者 林崎 良英  じっぴコンパクト
この本は、高校生向けか大学生向けに、わかりやすく書かれた本ですが、
同時に最新情報まで取り込んで平明に書いてある点で、
優れた入門書であると言えます。
 研究者が書いた本は、入門書と名が付いていても難解なものが多く、
研究者でない人が書いた本は、
全体はわかりやすいが、肝心な点がわかりにくいという欠点があります。
 しかし、この本は、研究者が書いた本でありながら、
わかりやすく、丁寧で親切な文章となっています。

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